『ファイナルファンタジー』(FF)は世界規模の認知度を誇る日本発のゲームシリーズだ。累計出荷数は1億本を超え、新作が出るたびにゲーム業界が加熱する。壮大なストーリーに惹かれるファンもいるが、世界観に貢献する音楽も注目されている。シリーズに携わってきた作曲家の植松伸夫さんは教科書に取り上げられるなど、巨匠として高く評価されている。
そんな植松さんと対面したことがある。2013年秋、植松さんが率いるバンド、Earthbound Papasが海外プロモーションの一環として、僕が留学していた米カルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にて講演されることになった。以前からコンサートなどでご活躍を追っていた僕は、海を越えてお会いできるとは夢にも思っていなかった。急遽、地元のゲームジャーナリストを探して取材を提案した。僕が通訳として同行し、インタビューで聞き手と一緒に同席させていただく。尊敬する人に会うために取材を駆使したのは、これが先駆けかもしれない。うろ覚えの箇所もあって恐縮だが、ここにてそのインタビューを取り上げたい。
Earthbound Papasを結成したきっかけは?
元々Black Magesというバンドでラスベガスなどでも公演していましたが、諸般の事情で解散してしまいました。メンバーのスケジュールが大きな理由ですね。だからメンバーを入れ替えてEarthbound Papasとして活動を再開しました。
バンド名の由来は?
よく聞かれます(笑)。逆に聞きたいんですが、Earthbound Papasと聞いてまず何が頭に浮かびますか?
ゲームのEarthbound(邦題は『マザー』)ですね。でも、『Earthbound』というアルバムを発表したバンドもいますね。
ええ、King Crimsonですよ。Earthboundの聞こえが好きでしたが、印象が尖りすぎないように「Papas」も加えました。何しろ、おじさん達のバンドですからね。
Black Magesの頃はドラム、キーボード、ギター、ベースという定番の組み合わせで演奏していました。今のバンドでは男女2人ずつのヴォーカルも入り、もっとロックな演出を狙っています。また、前のバンドでできなかったFF VIIの『更に戦う者達』や、作曲をお手伝いしたゲーム『大乱闘スマッシュブラザーズ』からロック調のカバーをしてみたいです。あとは新曲も作りたいですね。でも、ひとまず公演に集中したいと思います。
ロックな植松さんも好きですが、ファイナルファンタジーの楽曲をオーケストラ演奏の『Distant Worlds』も開催されていますね。
ジャンルが違い、観客の楽しみ方が異なります。バンドの時は立ち見ですが、オーケストラ鑑賞は着席です。様々な形でゲーム音楽に関わってきましたが、自分や聴くみなさんにとって楽しいことができて嬉しいです。
もしご自身の生涯を表現する交響曲を作曲するとしたら、どのような仕上がりになりますか?
オーケストラにはなりませんね。ロックの方が適切で、きっとピアノソロみたいなシンプルなものになると思います。
現在、日本では映画『風立ちぬ』が社会現象となっていますが、宮崎駿監督曰く「クリエイターのピークは10年」だと。同じクリエイターとしてどう思いますか?
確かに若い時は勢いがありますが、ピークの長さはその人が決めることです。自分はどんな作品でも影響を受けたくないので観ていませんので、映画については何とも言えません。でも、これからも自分が好きな作曲と演奏を続けたいです。
植松伸夫プロフィール
1959年、高知県出身。神奈川大学外国語学部卒業。CM音楽制作などしたのち、FF生みの親である坂口博信さんに誘われて1986年株式会社スクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社。2006年に自主レーベル「DOG EAR RECORDS」を設立。2011年にEarthbound Papasを結成。
ローランド リチャード
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