奇才モーツァルトの再来!演出家・宮本亜門が説く、アイデアの源とは

幕が上がった瞬間、別世界が展開するオペラ。そこで繰り広げられる葛藤は、不思議にも身近に共感できるものだ。初めて鑑賞したモーツァルトの『魔笛』で軽やかな音色と暖かみ溢れる舞台に活気づけられ、以来オペラ座に通い続けている。その『魔笛』が二期会によって公演されることを知った僕は、演出される宮本亜門さんに突撃させていただいた。
 

 
宮本さんにとって、モーツァルトの魅力はなんですか?

実は言うと、モーツァルトはいつも自問自答する大変な変人なんですよね。感情も激しく揺れますが 、その人間らしいモーツァルトが作る音楽は人類愛に満ちています。「どうしてこんなに美しい音楽を作れるの?と聞きたくなるほど美しい」あらゆることを体験して一生懸命生きてきたからこそ、モーツァルトは名曲が作れたと、僕は思います。
 
宮本さんの人柄と似ていますね。

僕、そんなに変っているかな(笑) 。面白おかしく、いろんなことを楽しむ点では似ているなと。「人はなんで生きているんだろう? どうしてこんなに苦しむんだろう?」みたいな、 人間の中の気持ちを大切に作っているのが、モーツァルトのオペラなんですね。
 
本家本元のオーストリアでの上演は大変なプレッシャーがあったとは思いますが、反応はいかがだったでしょう?

舞台は大成功でした。だけど、稽古の最初の日は全員ドン引き。「日本人が作ったゲームの世界に入って、今までにないモーツァルトの世界を作るんだ」って言ってたら、「変な奴がアジアから来た」みたいな顔をされて、緊張からスタートしましたね。だけどみんなで譜面を見てて話しているうちに、すごくいい雰囲気の稽古場になってきて、そのまま本番にいけたんです。
 
ゲームの発想はどこから来たんですか?

モーツァルトは『フィガロの結婚』とか『ドン・ジョバンニ』を作ってきたけども、最後にあえて一般大衆に「音楽付きお芝居」という形で見せたかったのが『魔笛』。みんなに手を差し伸べている温かい作品なんですよね。
 
今回はオーストリアの公演を日本に逆輸入する形となりますが、何か加えた点などありますか?

世界初で、オペラとゲームを結びつけます。この舞台は、ゲームから『魔笛』のファンタジーな世界に入る話なんだけども、 なんとそのゲームを遊ぶことができるんですよ!劇場に来ると、舞台にある巨大なQRコードからそのゲームをダウンロードでき、うちへ帰っても楽しめます。
もしモーツァルトが今生きていたら、きっと彼は喜んでゲームをやっていて、ゲーム音楽も作曲していたでしょう。新しいものが好きな彼は、普通と違う発想でオペラを作っていたので、そういう意味ではゲームとぴったり合っていると思います。
 

亜門さんに古いポーズをリクエスト

亜門さんに古いポーズをリクエスト


奇抜な発想力を持つ宮本さんですが、そのアイデアの源はどこでしょうか?

普通の発想に興味がないんです。だいたいああすればこうなると何事も想像がつくじゃないですか。それをまず自分の頭の中で壊します。だけど、ただ変えるのではない。たとえばモーツァルトだったら、鍵盤に指を置いたときのワクワクを大切にしたいんです。あのイメージを自分の中に入れ込んで、台本や譜面を読みながら作り上げていく。お客さんにも驚いてもらい、そして本質をえぐりだしていく。
 
かなり斬新な演出ですね。それでも若い人が「オペラ」と耳にすると、 敷居が高く感じられてしまいます。

そう感じてしまうオペラの歴史もありましたからね。でも、あらゆる人がオペラを楽しめる時代になりました。ちなみに僕は25歳くらいまで、オペラを見たことなかったです。一回見に行ったら寝たんですよ、最初から最後まで。終わりの拍手の音で起きたら、周りの人たちがすごく冷たい顔でにらんでるんで、余程いびきがすごかったんじゃないかな。「オペラは永遠にわからないな」と思っていたんだけど、26歳のころ、ロンドンで新しい演出のオペラを見ました。『リゴレット』は宮廷の話だったのを、アメリカのバーやカジノに変えていたりして、 古い曲が新しく感じられて。やり方によっては、ますます面白くできると感じたんです。
 
演出に新規性を追求するオペラの公演もありますが、それが理解されない場合もあります。今回の『魔笛』ではどのように配慮しましたか?

今回は難しすぎずにモーツァルトの本来の楽しさを意識しました。でも過去には大胆な解釈を入れ込んだ作品もあります。前にモーツァルトの『ドン・ジョバンニ』をやった時には、9・11後のアメリカという設定でやったんです。全部崩壊した瓦礫の中で、人が愛に飢えている状態に設定にしたので、お客さんの半分の人は怒りましたよ。だけど新しい感動が好きな人たちは「これこそ『ドン・ジョバンニ』ですよね!」と。そういう賛否両論あることも、オペラの面白さなんですね。
 
ちょっと話が逸れますが、僕は今大学生です。宮本さんは学生時代にずいぶん悩まれたそうですが、自分の進みたい道はどのように見つけましたか?

誰も自分の進みたい道を教えてくれませんでしたので、僕はどうやってやるか本当に悩みましたね。20代は誰にも相談することもできず、悶々としていて暗かったなー。だから僕の刺激は、海外です。何かあったらアルバイトで溜めたお金でいろんな世界を見て、「自分だけは絶対、狭い世界の考え方に凝り固まっちゃだめだ!」と自分に言い聞かせてきました。
アメリカのお芝居には毎回驚きと楽しみがあって、心が解放されていった。 イタリアで始まって世界中に栄えていったオペラのように、人種を超えて集まる20世紀のニューヨークでミュージカルというものが誕生したんです。「歌だって踊りだっていいじゃない」と枠組みを超えた面白さをドラマに入れていったのがミュージカル。どちらも人種と国を超えて感動できるから好きです。
 
では、日本人の宮本さんなら何を入れますか?

僕は子供の頃は日舞とか茶道とか、日本の文化をずっと勉強していました。そういうのを同じように舞台に持って行ったら、きっと今の現代人にはわかりにくいので、そこに現代のテクノロジーと一緒にスパイスを入れ込みます。今の日本人が純粋に昔と同じように生きてきたかというと、そうではないですよね。一回、完全に西洋的な文化を入れ込みはじめたので、その中でも日本の文化を見せています。不思議でアメイジングな島国なんです、日本は。もちろん世界にはいろいろ面白いものがあるけど、余計なものを全部排除したシンプルな美意識の到達点です。辺境の島国だからこそ、作り上げられてきたオリジナルな世界があるんですよ。
 
この世界に、普段は気付きませんよね。

だから何事に対しても、「これが普通だ」と決めつけることをやめましょう。発見が無くなっちゃうから。常に「Why?」という子供のような純粋な気持ちで周りを見ていった方が楽しい。
 

人生は常にショータイム!

人生は常にショータイム!

ピカソ曰く、「子供はみんなアーティスト」だと。でも問題はそのアーティストの心を大人になっても失くさないことです。

僕が21歳の時、おふくろが突然死んだんです。これは僕にとって最高のチャンスになったんですね。人生は一回しかない。いつ死ぬかわからない。明日かもしれないよ。
その中で生きている僕たちは、この一瞬一瞬を大事にしないのはあまりにもったいないじゃないですか。今、世界では難民で食べるものが無くて苦しんでいる人もいる。なのにこんなラッキーなところで生まれ育った。 僕はもう決めたんです。自分の人生一瞬たりとも無駄にしたくない。もちろん大変なことはたくさんある。でも、それがないと自分が強くなれないんです。
僕も20代の最初は、 もちろん悔しかったです。「なんだよ、この世の中!」 とか思って文句を言っていたけど、それ以上に自分の幹を強くする。そして人にできることをする。「チクショー」と思いながらも頑張ってきた理由です。
 
最後に聞かせてほしいのですが、もし僕が主演俳優をつとめる場合、どのような作品でどのように演出していただけますか?

え、主演俳優やりたいの?そんな、会って10分くらいしか話してないじゃないですか。

オーディションだって一瞬で人を見抜くじゃないですか!

・・・あなたは人をまとめたり新たな方向に導くのが好きなんでしょう?

お見通しですね…

リーダー的に明るく面白く人を導く。だけど、実は一人になると悩んでる役はどう?

あらら、またまた…

でも、孤独を伴うのがリーダーの面白さだから。この前やった『メリリー・ウィー・ロール・アロング』の主役もそういう役で、合うと思うな。

じゃあ、今度エキストラでも。

ええ!エキストラ?今主役の話じゃなかった?

まずは階段をのぼっていくかと思いましたが!本当にできるんですか?

何事も、できるかどうかは自分次第。

人生という舞台で悔いなく演じきりたいと思います!

素晴らしい言葉だ!

キメ台詞です!

これからも、がんばってください!

取材班全員、亜門さんにお会いできて感激しました!

取材班全員、亜門さんにお会いできて感激しました!

 
宮本亜門さん
東京・銀座生まれ。ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎等、ジャンルを越える演出家として国内外で幅広い作品を手がけている。


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ローランド リチャード

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1994年、東京生まれ。カナダと日本のハーフ。現在、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)に通っている。当サイト唯一の運営者。

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