Bitcoinをはじめとする仮想通貨への関心はますます高まっている。通信業者が集う「インターロップ」では、有識者を招いたパネルトークが行われた。登壇者にはみずほ証券の小川久範氏、SBIホールディングスの藤本守氏、日本植物燃料の合田真氏が並び、司会者として慶應義塾大学SFCの斉藤賢爾氏を含めた4人が討議に挑んだ。
みずほの小川氏は仮想通貨の環境にまつわる観測を披露した。仮想通貨関連企業が多額の資金を調達し、通貨自体が高騰している。また、仮想通貨法が可決されたことにより仮想通貨が法律上定義され、マネーローンダリングやテロの対策、利用者の信頼の確保が行いやすくなったという。こうした法整備はすでに海外で進んでおり、日本もやっと仲間入りできそうだ。しかしブロックチェーンの運用がまだ定着していないため、この法律があらゆるケースを網羅しているわけではない。例えば自己価値を基に個人が「株券」を発行できるVALUなどブロックチェーンを活かしたサービスはまだ実験的である。だがこれが普及のきっかけになればと慶応大学の斎藤氏は期待を寄せている。
金融界がブロックチェーンに積極的になる動機として、既存の銀行システムの欠点を補えることにあるとSBIの藤本氏は分析する。つまり業界内の標準がないと機関ごとのシステムが孤立して円滑な取引が難しくなる。また、ブロックチェーンによって本人確認の手間が省けるなどさらなる利便性が期待できる。いずれ送金がより容易となり、例えば資金回収までの期間を既存のクレジットカードの2ヶ月からリアルタイムへ劇的に短縮できると予想する。しかし、そのような運用を実現する前に主要な仮想通貨が確立しなければならない。
このように金銭の流れが把握できることで、金融界に限らず社会にもメリットがあり、国家政府も導入に協力的になると小川氏は考える。地下経済の規制や、課税強化を実現しやすくなり、先日大幅なデノミネーションを実行したインドなどが活用する予感を示した。
グローバリズムが台頭する中、国際政治からの孤立を謳うトランプ旋風などの逆流もあり、仮想通貨もこの乱立時代にあり飛躍の可能性を秘めていると日本植物燃料の合田氏は見ている。現在日本銀行などの中央集権化が主流であるが、中世時代の欧州では領主や商人のギルドが通貨を発行していたこともあり、仮想通貨の普及が決済地域の細分化を再び招くかもしれない。
仮想通貨がまだ黎明期にあるために確実な未来図は描きにくいものの、これまでの金融の概念が変わることで一同同意して議論を締めくくった。
画像: “Cryptocurrency Art Gallery” (Public Domain) by Namecoin
ローランド リチャード
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