今月25日に公開される『龍三と七人の子分たち』を一足先に鑑賞しました。場所はオフィス街にあっけなく混じった試写室。サラリーマンが忙しく集う中、中年たちが会場前にて並んでいました。
邦画作品の中でも、北野武監督の作品は独特な雰囲気で知られます。例えばカンヌ国際映画祭でゴールデン・ライオンを獲得した『HANABI』はわびさびが漂い、セリフが少ない代わりに凝った映像でストーリーが展開されます。普段は暴れん坊のビートたけしも、銀幕では知性を尖らせた北野武に変身します。
逆に今回の『龍三』は新作のコント集のようでした。オレオレ詐欺に引っかかった元ヤクザ達が自警団として再結成し、若者たちのサギ集団を懲らしめにいきます。いくら現役時代では一流だったとしても、老人の感覚では笑いの種です。ギャグ満載の脚本はヒットもミスも多く、今のたけしさんを反映しています。
今回のビートたけしは控えめにベンチ待ち。刑事役として元ヤクザを目で追いながら、ギャグを避けます。いつもは存在感だけで笑いを期待させるたけしさんだけに、これは反則ではないでしょうか。それでも藤竜也率いるヤクザ軍団はお笑いを演じきります。健在のブラックユーモアに爆笑しました。
終演後は一緒に来た友達と感想を交換。僕は老人たちが地元で暴れているだけでは方向性が感じにくいと主張しました。しかしお笑い芸人を目指していた友達にとって、たけしさんは憧れの的です。後先が短い今、何やっても構わない姿勢を示したと代弁しました。すると隣席のおばさんたちも会話に入り、笑えたらエンターテイメントとしてすべてよしと同意しました。果たしてエンターテイメントをどう定義するのか、今でも気になって仕方ありません。
この記事が襲撃事件に発展しないことを願います。
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ローランド リチャード
1994年、東京生まれ。大学時代にリッキーレポートを始める。現在は会社勤めしている。
社会人生活を始めてから更新が途絶えるものの、また新しい記事を投稿したい思いを持っていた。
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