「インターネットの父」村井純と考える、未来の教育モデル@慶応SFC

今年で25周年を迎える慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)。卒業後は分野問わず活躍してきたOB・OGの方も多く、国内の大学でAO入試を先取りするなど話題を呼んできた。そんなSFCもさらなるフロンティアを開拓するべく、学生たちが先導するキャンパス作りが始まっている。SFC Self-Build Campus(SFC-SBC)では、キャンパス内の空き地を活用して学びの場の構築を計っている。毎週行われる話し合いでは、教員らの力を借りつつ学生たちの提案を切磋琢磨する。今回は「インターネットの父」として知られる村井純先生も議論に参加された。

まずはこのプロジェクトを進めてきた学生たちの報告から。これまで教育の中枢を担ってきた大学も、その存在意義が問われていることに言及した。しかしながら大学の魅力は授業に留まらず、仲間との出会いにもあると指摘し、「昼夜問わず語り合える場所を作りたい」と宣言。それを実現するべく、生徒が自由に集える「カンガクセンター」が7月に完成することを発表した。

続いて、建築に携わるSFC卒業生の菊池豊栄さんが登場。学生用宿舎の未来創造塾のコンセプトについて説明した。滞在型だからこそ学びの時間を最大限に活かせると提唱。目玉のガレージらしきものづくりスペースを用意し、キャスター付きの家具を用途に合わせて動かせるなど、これまでにない学びと触れ合いが期待できる。

ここでSBCに実現したい企画を有志の学生たちが発表した。最初はギリシャ語の「広場」を由来としたアゴラガーデン。空間の仕切りが決まっている既存の施設と違い、滞在者がストレスを抱えない広々とした開かれた空間を目指している。ここで、村井先生がSBC発のアイデアがSFC全体を変える可能性を持つと共感しながらも、それぞれの関係性を考える必要があると指摘。発表者はさらに企画を練ることになった。

次の発表者は斬新な発想を促進する場として、機関車の設置を提案。SL好きの本人曰く、『銀河鉄道999』や『銀河鉄道の夜』などの作品が未知なる世界への旅立ちを啓発し、「未来からの留学生」であるSFCの学生たちの好奇心にアピールした。 鉄道会社からの寄贈を期待した村井先生は参加者らの笑いを誘った。

続いての発表者は、次世代エネルギーの未来も視野に入れるべきだと提言。自然豊かなキャンパスを活かして、水力や太陽光熱から発電して安心できるシステムを設置したいという。グローバルな環境問題を解決するためにローカルな事例モデルを作り、それを世界展開させたい考えだ。村井先生は想定外だった2011年の震災後の計画停電に触れ、「安全」とはまたニュアンスが違う「安心」が必要と強調した。

最後はチューリップを植え尽くす提案があった。発表者は高校時代に園芸部に所属し、校舎にチューリップ3000球を植えてオランダ大使館から受賞した経歴の持ち主だ。SBCではフランス由来のポタジェ(Potager)で環境と食への関心をさらに高めるつもりだ。花と野菜を混植した庭は、発想を柔軟にする刺激となるそうだ。ここで村井先生が果物も含めないことに疑問を感じたところ、果物が木に成長するという専門的な解説に唸った。続いてオランダの空港で視界に広がるチューリップ畑に感動したエピソードを紹介した。

締めくくりとして村井先生がSBCへの思い入れについて語った。これまでの大学では各分野の研究が連結しにくかったが、今後は学生主導の教育で変革していくことを期待している。今の状況を打破すべく、今年はとにかくSBCの持ち味を打ち出すことに専念したい。目標達成後には全体の連帯感が生まれ、コンセプトが定着すると考えている。その後は手探りで発展させ、「運営する」意識を根付かせたいそうだ。だからこそ、「語ってはいけない」ことを逆に語り合い、5年後、10年後の計画を並列で考える必要性を訴えた。
 

あいうえお

土肥理梨恵子さんと中村すみれさん


会議が終わり、SBCを主導してきた学生たちに話を訊いた。
 
議論の手応えは?

中村さん 発表した学生たちは初めてアイデアを共有して緊張していましたが、フィードバックをいただいて達成感を味わえました。
 
そもそも「SFCらしさ」って何ですか?

土肥さん これまで、SFCでは自ら周りを変える自信と行動力を持っている人材を輩出してきました。しかし、その勢いが衰えているように感じます。SBCを始めることによって、1年生でも身近な場所に関わり、環境を変える自信を取り戻してほしいです。
 
学生たちが今の授業に期待しているように思えません。

中村さん キャンパス外で魅力的な活動の機会が増えています。インターンシップやアルバイトなど外部企業と関わったり、リッキーを始め独自に動いている人もいるので、SFCだけでは満足感を得られないのかもしれない。自分に必要な学びを得るためのヒントを提供するのが、この時代に合った教育です。
 
個人的に見ていて、土肥さんはこれまでSFCのコミュニティーに積極的に関わってきました。これからのSBCへの期待は?

土肥さん コミュニティーの集大成だと思います。今日は農業やエネルギーなどいろんな分野の話が出ましたが、そこで生まれるつながりはこのSBCならでは。これまで乏しかった研究会同士のコラボレーションを促進し、SFCが一丸となって取り組めるプロジェクトです。
 
また、村井先生にも意見を伺った。
 
なぜSFCの25周年というタイミングですか?

SFCは 挑戦的なキャンパスで、新しい大学として何事にも恐れずに挑戦してきました。最初の25年は経営側がキャンパスを管理してきましたが、実際に引っ張ってきたのは学生たちです。当時の学生たちが巣立ち、社会の中枢を担う年頃になりました。25年目のチャレンジはキャンパス運営のポリシーです。学生たちが持続的に関わり、いつでも奮い立てるキャンパスに衣替えするべきでしょう。
 
確かにSFCはチャレンジしてきましたが、それでも授業は教授からトップダウンで教わる形です。そこは他の大学と変わらないのでは?

SBCができれば、 教育の一部を担えるなど、学生が環境を変えられるようになります。未来創造塾では SFC全体の未来を長期的に考え、その中でカリキュラムや運営に関わる方向に移ると思います。
 
これからSFCが開拓するフロンティアは?

いつでも未来は開拓するものです。今後も社会的な課題も変わってくるので、それにやわらかく対応できるのが本当の変革でしょう。 入学してから4年間は変えられない「約束」があるなど、学校は一度決めた事で堅くなり、変革のリズムが鈍化しがちです。しかし、大学に属する学生が関わることによって変革のサイクルが早くなるはず。あるべき姿を先取りして開展できるキャンパスになれます。

先生もポーズ

先生もポーズ


 

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ローランド リチャード

ローランド リチャード

1994年、東京生まれ。大学時代にリッキーレポートを始める。現在は会社勤めしている。 社会人生活を始めてから更新が途絶えるものの、また新しい記事を投稿したい思いを持っていた。

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