脱サラ後、新橋のロックバーのマスターになった今を語る

新橋に行きつけのバーがある。70年代に流行した「プログレッシブロック」を中心に流す「ロックバー童夢」だ。と言ってもお酒は飲めないので、音楽とマスターの関将敏さんを目当てに通う。たわいもない話をするのが常だが、今回はサラリーマンの関さんがなぜにバーを開くことになったのか経緯を伺ってみた。
 
バーのマスターになる前はサラリーマンをされていましたよね。

当時はバブルで、大学を卒業してから今でいうIT企業に入りました。実質23年くらいいましたが、お客さんのシステム作りだとか、パッケージ作りなどの仕事をしていました。いまから10年前、会社に社員全員が入っている労働組合があったのですが、そこの委員長をやってくれないかっていう話がありまして。正直に言うと当時の現場の仕事が好きでしたが、他にやる人間がいないのでいやいや委員長になったわけです。でも最初の2年に前任の委員長のやっていることを踏襲しながらやっていくうちに、委員長としての使命を感じて自ら提言したり、やりたいことに取り組みました。苦労もありましたけど結構自分は楽しめて、労働組合の仕事を8年ぐらい続けました。
ただ、そろそろ組織に新しい血を入れないと感じながらも、同時に自分も40ぐらいになったあたりから「これ以外の働き方もあるな」と考えるようになりました。最初は委員長を退任して会社の違う部門や支部に行くのも考えましたが、誰かの下に着いて指示される形態に戻るのが居心地良くない。もう会社にいなくてもいいのかなと思ったわけですよ。起業という選択肢もありましたが、チームではなく一人で何かやりたかったです。
一方、趣味でずっとロックを聞いていたりしたので、それを仕事に活かせたら楽しいだろうなと単純に思いました。ミュージシャンになるのは無理なので、たとえばレコード屋とかライブハウスをやるとか。音楽をかけてみんなで楽しめるお店を考えた時に、自分の器量でなんとなくやれるのがロックバーでした。

 
なぜバーにしましたか?

バーは基本的にお酒じゃないですか。食べ物も多少出しますが基本的にはお酒飲みながら音楽を聴きたい人に来てほしい店にしたかったですね。
バーテンダーの知識がなかったのですが、ネットで調べたら養成学校がありました。それ以外にも飲食の経営に関するセミナーなど講演会などはなるべく積極的に参加し、いろんな話を聞いたり相談したりしましたね。
場所はどこでもよかったので、渋谷・新宿・六本木・赤坂など、山手線の超える範囲で主にターミナル駅で物件を探しました。当時たまたま空き物件が新橋にあり、プログレッシブロック(以下、プログレ)という70年代に流行ったジャンルの音楽を掛ける特殊なお店なので、多少遠くても電車に乗ってきていただくお客様もいると想定しました。

 
実際にプログレ好きのお客さんが多いのですか?

プログレが好きで来店されるお客様が半分ぐらいで、それ以外の3、4割ぐらいが、ロック全般を聴きに来ます。残り1割がなんとなく飛び込んできた方ですね。
 
関さんに会うことを目的に来店するお客さんも多いですか?

それは少ないと思いますね。(笑)マスターがいい人だって言ってくれる人もいますけど、主役は音楽やお酒とかにしたいので、マスターはあくまでサポートです。うちは音楽をゆっくり聴きながら語らったりする店にしたいので、そういう意味では別に僕目当てで来てくれなくても全然構わないと思っています。

 
お店のコンセプトであるプログレってどんなものですか?

プログレには多分定義なんていうのがなくて、あくまでハードロック・メタル・ニューウェーブなど音楽のジャンルって便宜上分かりやすくするためにあるだけと思ってます。一つプログレで言えるのは、曲が長いことです。(笑)あとは音が分厚いとか、変拍子を使っているとか、あくまで表面的な部分でしか言えないですよね。本質的な部分でプログレかどうかって言うのはすごく難しいです。

 
関さんはプログレとどのように出会いましたか?

私が中学生の頃、 洋楽のヒットものをなんとなく聴いてました。最初はハードロックのレインボーにはまりました。そこのギタリストのリッチー・ブラックモアズがディープ・パープルというバンドに所属していたのを知り、それを聴くわけですよね。彼らは70年代の中盤に解散していたわけですから、そうすると70年代前半のロックを聴き始めました。ブラック・サバス、レッドツェッペリン、ユーライアヒープ、フリー、テンイヤーズアフターとかだんだんと横に流れるわけです。そのうち、いわゆるプログレで定番のキング・クリムゾン、イエス、ジェネシスなどの存在を知りました。
周りにプログレなんて聴いている人は正直あまりいなかったのですが、背伸びして人が聴いたことのないものを聴いてみたかったです。正直に言うと20分の曲を聴くのは修行でしたが、何回か聴いていくうちにはまっていきました。一回聴いただけでは魅力が絶対分からないのは、哲学書を読むのと一緒ですよね。

 
関さんがお気に入りのアルバム三枚は?

やっぱり最初に買ってリアルタイムで聴いたので印象が深かったです。

 


不思議なことにエマーソン・レイク・パーマーというバンドが、クラシック音楽の「展覧会の絵」をロックにカバーしていて、なんてバカなことをしているんだと思って聴きたくなったのを覚えています。

 


曲が全部バラバラなのに、一枚のアルバムを通してトータルできちんと創られていることにびっくりしました。当時も同じようなコンセプトアルバムがいろいろあったのでしょうけど、「狂気」はすごく完成度が高かったと思いましたね。
 

最後に人生の中で影響を受けた本についてお聞かせください。


自分が落ち込んだ時になんとなく読みます。書いてある通りですけど、自分で何かやっていかないと、人生は変わらないよという内容ですが、読むと「やっぱり頑張ろう」という気持ちになれます。


自分が哲学にはまるきっかけをくれた本です。昔から哲学に興味があったのですけど、良い入門書にめぐり合えなくて 。でもこの一冊は哲学の意義とか発展とか歴史とかすごい分かりやすく書いてありました。


これは組合の委員長をやっていた時に読みました。一般的なリーダーシップ論の本は表面的で実践的なことで終わってしまいますが、この本はもうちょっと深く掘り下げていて、どうすれば人にやる気を出してもらえるかを心理的に解説しています。
 


「ロックバー童夢」ホームページ

 
関将敏さんプロフィール
1966年、神奈川県生まれ。大学入学と同時に上京。2013年に童夢を開業。
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1994年、東京生まれ。カナダと日本のハーフ。現在、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)に通っている。当サイト唯一の運営者。

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