プレステ20周年!ソニーの吉田修平と「鉄拳」の原田勝弘が語る仮想現実

今年で20周年を迎えるゲーム機、プレイステーション。これまでに様々な技術革新でゲームの表現の幅を広めていったが、現在はProject Morpheusの仮想現実(VR)でさらなる没入体験を提供しようと開発を進めている。今回はソニーコンピューターエンターテイメントの吉田修平さんとバンダイナムコゲームズの原田勝弘さんに今後の展望を伺った。
 
お二人がVRに着目したきっかけについて教えて下さい。

吉田さん PS3を開発していた時、PS Moveという体感型コントローラーを作りました。PS Moveを出した頃に、各所で同時多発的にヴァーチャルリアリティーシステムを作り始めたんですよ。当時は映画とか見るために頭に被るヘッドマウントディスプレイにMoveをくっつけた感じです。開発は2010年の終わり頃から。研究を重ねてハードウェアのパフォーマンスが十分なPS4を狙うことになりました。

原田さん 中学生の時、セガさんのスペースハリアーとかアウトランとかアフターバーナーを見て、僕の中ではあのような臨場感あふれる体感ゲームをVRだと思ったんですよ。で、プレイステーションのポリゴン時代になって、やっぱり空間が作れるのはすごいと思いました。3年前くらいからヘッドマウントが取沙汰されるようになったのを見て、これは来たなと。それで「やるしかない」と感じました。
 
開発の段階で苦労された部分はありますか?

吉田さん やっぱりまずはもうハードウェアですよね。仮想世界に入って違和感があったら台無しなんです。だから画面が出力命令に反応する速度とか、頭の動きを追う技術とか、とにかく技術を高めるっていうのが一番大変でした。まだ途中ですけど、もう世の中に発表して、開発ツールとしてゲーム会社に渡して、作ってもらえるとこまできました。

原田さん 実は当初の開発は会社内で部活扱い、いや、それ以下でしたね。なので格闘ゲームの鉄拳についている予算をこっそり新規開発の人件費に使いました。

吉田さん 新しい事は内緒でやれという格言があるんですよ。

原田さん なのでいろんな人にお願いしに行ったら、本気でやる気になったら、金くれが先じゃなくて先にお前の工夫でお前のポケットマネーでやれって言われました。

一同   え!

原田さん たまたまプレイステーション生みの親である久夛良木健さんがバンダイナムコに別件で来られた時に、僕が役員の前で「これから来るヘッドマウントを今からやっとかなきゃ駄目ですよね」って聞いたら、「確実に数年後には来るので、その時になって『やってませんでした』はありえないですよね。」と答えていただきました。それでも予算は出ませんでした。
ただ久夛良木さんも似たようなことを言ってて、やっぱりこういう面白いものが生まれる時は全体で歩調を合わせてじゃなく、 やる気のある人がこっそり、無理やり別の予算取って、嘘ついてでも作るべきなんだと。

吉田さん ウチも同じなんですよ。「作るぞ」じゃなくって、作っちゃっててから面白いからオフィシャルのプロジェクトにしようという感じです。

原田さん 大体、順序は逆のほうがいいんだなと。要は結局証明するのはアウトプットじゃないですか。できるのものでしか証明できないので、やり始めちゃうとやるしかないんです。

吉田さん 最初にブンと振ったらホームラン出ちゃった感じありますよね。

原田さん そうそう、勢いですね。私はMorpheus用に開発した「サマーレッスン」には2ヶ月しか費やしていませんが。逆に今では周りがこのスピードについてこれてないので、上の人が次の一歩をどうするかを考えないといけないと悩んでいます。でもすごく前進しはじめたことはありがたいです。
 
今までプレイステーションのアクセサリーとしてカメラのEye ToyとかMoveとか発売されてきましたが、体を動かしたくないコアゲーマーには敬遠されてきた印象です。Morpheusの反応はどんな感じになると思いますか?

原田さん Eye Toyはコアではないですが、ヨーロッパではえらい人気だった。

吉田さん そうそう、カジュアルゲームが大人気ですね。今回はコアが注目していました。別に身体動かさなくてもいいんですよ。パソコンで同じヘッドマウントのOculus Riftを使ったゲームがあるんですが、ボタンを押している指を離しちゃいけないっていうゲームがあって、ゲームの中に手があるんですよ。そしたらクモが近手の上を登ってくるんですが、それに耐えられるかというものです。結局、違うところにいて違う事をやってるっていうのが楽しい訳です。

原田さん 例えば自分が歩いているときに机とか本棚とぶつかった時にこっちの現実に気づいちゃったら、せっかくゲームの中にいたのに没入感が落ちますよね。

吉田さん 逆に動かないっていうのはそれを回避できるから、そういう工夫を割とみなさんが始めていますね。そうすると完全にシンクロした気持ちになるんです。
 
今のソニーはグループ内のシナジーを重視した「One Sony」を掲げていますが、ゲーム以外にもMorpheusの応用を考えていますか?

吉田さん 技術的にはできますが、まずはPS4を持っている方に喜んでいただくものを作るというのが第一です。いろいろ応用例はあるので、それはいろんな企業から一緒にやりましょうっていう声を掛けていただいてます。
 
最後に影響を受けたゲーム作品についてお聞かせください。


吉田さん いっぱいありますね。昔はドラクエとかマリオ 。パックマンとかリッジレーサーはもちろん、グランドセフトオート、トゥームレイダーとか。あとわざと他社のゲームを挙げてますけど、ゼルダとかですかね。

原田さん いっぱいあるからなんともいえないけど、セガのアーケード系体感ゲーム系や、特に90年代中盤・後半のポリゴンのゲームなんかほとんど影響を受けています。他社のゲームは作りながらでも遊んでいましたよ。
 
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吉田修平プロフィール(右)

1964年、東京生まれ。1986年京都大学経済学部を卒業後、ソニー入社。在籍中にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にてMBA取得。1993年にソニーコンピューターエンターテイメント(SCE)の立ち上げに参画。現在はSCEワールドワイド・スタジオプレジデントとしてゲームの開発を見守る。
 
原田勝弘プロフィール(左)

1970年、大阪生まれ。心理学を専攻して早稲田大学卒業後、ナムコへ入社。1994年から「鉄拳」シリーズのディレクター・プロデューサーを担当。現在はバンダイナムコゲームスのプロデューサーとして数々の作品に携わる。

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ローランド リチャード

ローランド リチャード

1994年、東京生まれ。大学時代にリッキーレポートを始める。現在は会社勤めしている。 社会人生活を始めてから更新が途絶えるものの、また新しい記事を投稿したい思いを持っていた。

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